発足の想い

発足の想い
若いがんサバイバーが抱える課題
AYA(Adolescent and Young Adult)世代および働く世代と呼ばれる、若い世代のがんが大きな社会課題となっています。
学業、仕事、結婚、育児など人生の重要な転機にいる中での闘病と、それに伴う後遺症。これらは、進学やキャリアの断念、恋愛や結婚への不安、子を持つことや子育ての課題など、多くの心理的・社会的な壁となり立ちはだかります。
医療の進歩により、「がん=死」ではなくなりました。がんになっても長期生存し、日常生活を続けることが当たり前になりつつあります(がん種や進行度により一概には言えませんが)。
しかし、若い世代のがんは希少であり、治療の難しさのみならず、置かれている状況も様々で、個別性・多様性が高いといった特徴があります。
学業並びに仕事と治療の両立、そして、キャリア形成や人生設計に不可欠である、周囲社会の理解が得られにくい現状もあり、同世代の仲間も少なく、社会の中で孤立しがちです。
国のがん対策推進基本計画でも、若い世代のがん(小児・AYA世代のがん)への対応が重要項目として掲げられていますが、医療機関や地域におけるサポートの整備もまだまだこれからです。
だからこそ、経験を価値に
未来への希望と期待に胸を膨らませる日々。そこに、宣告される突然のがん。やりたい仕事や理想の家庭、大切な人達と共に生きる時間…思い描いた人生の軌道は大きく外れていく。
当たり前の日常と、当たり前に手に入るはずだった未来。多くのものをあきらめ、失っていく。人生の景色は大きく変わってしまった。でも周囲に自分たちの苦しみを理解してはもらえない。孤独と不安の中で、自らの価値を見失いそうになる――
けれども、そんな弱さや悲しさを抱えた自分たちだからこそできることがあるのではないか。この経験を価値に変えて、未来を創ることはできないだろうか。がんばりたい、がんばれない、がんばっても無駄…でもがんばるしかない。
周囲や社会を変えたければ、葛藤の日々から一歩踏み出し、何かを生み出そう。大切なものを失い、あきらめなければならなかったからこそ、未来に何かを残したい――そんな強い思いが集い、がん経験者“だからこそ”できることを模索し形にするソーシャルデザインプロジェクト『ダカラコソクリエイト』(略してカラクリ)を、2015年よりスタートをさせました。
「がん経験を新しい価値に変えて社会に活かす」をテーマに、若い世代のがん経験者を中心とした立場や業種を超えた多様なメンバーと、それぞれの経験を活かして、社会を「ちょっと楽しく、ちょっと優しく」するようなプロダクトやプログラムを企画プロデュースしています。
関わってくれる皆さまの「つながり」と「成長」、そして社会に価値を提供する「創発」をゆるく目指していく場に育てたいと考えています。
当事者の視点で社会共創をデザインする
超高齢化、少子化、人口減少、価値観の多様化等、社会構造が大きく変化する日本。山積する課題と向き合っていくには、「支える・支えられる」の関係が一方通行でなく、年齢や性別、病気や障害、分野や業種を超え、多様な人たちがそれぞれの可能性を活かし、共に新たな価値を創造する「社会共創」が求められています。
そこで私たちが大切にしているのが「当事者の視点」、そして「楽しさとワクワク感」です。センシティブな社会課題、何だか難しそうな社会共創…だからこそ、当事者の視点で本質を捉えつつも、誰もが関わりやすい、“重い”を“軽く”、“かたい”を“ゆるく”するデザインを企んでいきます。
「自分に生まれてきてよかった」と思いたい
キャンサーギフト(がんからの贈り物)という言葉があります。
ただ、私はがんになって良かったとは思えません。だけど、がんになったことも含めて、この人生で良かったと思いたい。がんになったことも含めて、他の誰でもなく、自分に生まれてきてよかったと思いたい。
抱える悩みや人生の長さは人それぞれ。がんのような理不尽を抱えてもなお、それぞれの人生を肯定できる――プロジェクトを通して、そんな世界観を皆さまと分かち合えたら嬉しく思います。
創ろう、何かを生み出そう
大切な人たちが生きる未来のために
それが私たちの救いになると信じて
発起人 谷島 雄一郎